イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

「だから、私なら一人で帰れますって!」

「ったく強情だなぁ。それはさせられないって言ってるだろ」


 高価な着物を着せられて、いきなり慣れない華やかな場所に連れて来られて、私は自分で思っていた以上に緊張していたらしい。

 パーティーも半ばを過ぎた頃、私は急に強くなったお腹の痛みに耐えきれなくなり、葛城さんの手を借りてパーティーを中座した。

 ゲスト用の控室の片隅を借り、薬を飲んで休ませてもらい、調子が持ち直したところで先に帰らせてもらうつもりだった。

 血相を変えた羽根木さんが、控室に駆け込んでくるまでは……。


「私ならもう平気ですから、早くパーティーに戻ってください」

「ダメだよ、どっちにしろ一人で帰らせるなんてできない」

「でも、お家元がパーティーを抜け出すなんて。こういう場で皆さんのお相手をするのも、お家元の大切なお仕事なのでは……?」


 どうしよう、困った。

 今日のVIPゲストである羽根木さんが、私を送ると言ってきかない。

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