イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
羽根木さんの作品はとても評判が良く、国内のみならず海外のメディアからもインタビューを受けていた。
この機会に羽根木さんと話をしたいゲストもいるはずだし、新たなコネクションを作るチャンスなのに、どうしてこの人はわかってくれないんだろう。
「それなら大丈夫、あとは全部葛城に任せてるから」
「でも……」
それって秘書に任せてしまっていい仕事なの?
心配する私をよそに、羽根木さんはいたって平気そう。
「そうだ藤沢、苦しいなら早く着物脱いだ方がいいよ。楽そうな服見繕ってきたから、これに着替えなよ」
そう言って羽根木さんから手渡されたものを見て驚いた。
さっきショーケースの中に飾ってあるのを見た。これ『ルトロワ』の新作ワンピースだ! まさか、松原さんに言って借りて来たのかな。にしても……。
「こ、こんな高価な物恐ろしくて着替えられません。朝着てきた服に着替えますから! ……あれっ?」
サロンに行く前に着ていたパンツスーツ、私どこにやったっけ?