イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
三十分後、『ルトロワ』の女性スタッフにも手伝ってもらって着物からワンピースに着替えた私は、羽根木さんの愛車を見てさらに怖気づいていた。
羽根木さんの愛車は、シルバーのスポーツカーだった。車のことなんて全く分からない私でさえ知っている、盾と跳ね馬のエンブレムに思わず腰が引ける。
私を待っている間に羽根木さんも着替えをすませていたらしい。
凛々しい和服姿から、ラフなジャケット姿に変わっている。
「乗らないの?」
「乗ります、乗りますけど」
ドアの開け方すらわからなくておろおろとしていると、羽根木さんは私の手を取り助手席にエスコートしてくれた。
「どうぞ」
「ありがとうございます……」
車内を汚してしまわないようおそるおそる足を踏み入れる私を見て、羽根木さんがブッと吹き出した。
「なんですか?」
「いや、結月さっきからビビり過ぎじゃない? そんなに緊張してると、また痛いのぶり返しちゃうよ」