my sweet love〜third〜



「柚。それは違う」


「龍くん…」

「僕から一ついいですか?」

「もちろんだ」


「柚。それは違うよ
たしかに柚の移植をするためには
誰かの心臓が必要になる
そしてその順番を待つことになる

でもね結果として誰かの死を喜ぶ事ではないよ
柚が思っているのは多分
誰かの死で生きる私を喜ぶって事だろう?

でもね…柚
移植って言うのは双方の同意の上で
誰かの大切な一部が
誰かの大切な命を救うんだ


どうしてもこの先の未来を
歩めなくなってしまった人とそのご家族が
体の一部だけでも
誰かの中で生きていて欲しいと思う

その思いで移植を決めるんだ

それでも気が引けるのはわかる。


でもね。俺もお母さんもお父さんも
そして智たち4人も。
移植を決める向こうの方が思うのと同じように
柚に生きていて欲しい

移植をする事は誰かの死を待つ事でも
誰かの死を喜ぶことでもないんだよ」




「柚?今の龍くんの話を聞いても
あなたはきっと笑顔で納得はしないわよね
柚は心が優しい子だから
誰かの命をもらって喜べないと思うって
そう考えてるんだよね

でもね…
私は他の誰よりあなたが大切
健康な心臓で産んであげられなかった
私が健康で産んであげていれば
柚はもっと自由な生活が送れたのに…

だからこそこのハンデを持っても
こんなにいい子に育ってくれて
誇れる娘を持てたと思ってるわ
そんな大切な娘を救える手段があるのに
指をくわえて選ばないなんて
そんなこと私には到底できないわ

理解し難いことを理解しろと言っているの
そう簡単なことじゃないわ
でもね。何が何でもあなたに生きて居て欲しい
私はただそれだけなのよ」








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