独占欲強めな社長と政略結婚したら、トキメキ多めで困ってます
あ、そうだ。
「これ、受け取ってください。お礼がしたいので、連絡をください」
自分の名刺を差し出し、絶対に連絡をくださいと念押しする。強引なやり方かもしれないけれど、何かお返しをしないと気が済まない。
「……わかりました」
私の気迫に負けたように、彼は困ったような笑みを浮かべて、車の扉を閉めた。
「じゃあ、気をつけて」
「本当にありがとうございました!」
窓を開けて最後まで頭を下げて彼と別れた。
いい人に出会えて、私は無事会社に戻ることができた。
運転手さんにお金を払いますと言っても受け取ってもらえず、私は何も返せないまま見ず知らずの素敵な男性に助けてもらった。
連絡……来るといいな。
名刺には会社の電話番号と、私の携帯番号が記されている。
私はスマートフォンのディスプレイを見つめて、早く連絡がくることを祈りながら、会社へと戻ったのだった。