独占欲強めな社長と政略結婚したら、トキメキ多めで困ってます
「奥さん、本当に可愛いですねー」
「だろ」
社員の皆さん、来てくれてありがとうございます。智也さんにこんな言葉をかけてもらえたなんて、とても嬉しい日になりそうです!
浮かれ気分で皆さんを見ていると、ふと山口さんと目が合う。他の人がにこやかにしている中で、彼女だけが真顔で私を見ていた。
目が合って、微笑みかけると目を逸らされてしまった。
――あれ……? どうしたんだろう?
気になって声をかけようとしたとき、山口さんが口を開いた。
「奥様、何かお皿を借りてもいいですか?」
「え、あ、はい、どうぞ」
さっきまでの真顔が嘘のように笑顔を浮かべて話しかけられて、驚きながらも彼女に応える。
言われた通り何枚かお皿を出すと、彼女の大きな紙袋からいくつか保存容器が取り出された。
「実は私……社長がお好きなものを作ってきました」
彼女が出した料理は、鯛とムール貝のアクアパッツァに、スペアリブ、それから海鮮をたくさん使ったパエリア。
私には絶対に作れないような、彩鮮やかで豪華な料理に圧倒される。