独占欲強めな社長と政略結婚したら、トキメキ多めで困ってます
* * *
「はぁ……」
Valerieの奥にあるアトリエのソファに座って、脱力している私は何度目か分からないため息を漏らした。
「あのさ、そこでダラダラしているんなら、あっち行ってくんない? 仕事の邪魔なんだけど」
「直樹~、ひどい……」
忙しそうにデザイン画を描いている背中に話しかけても、レスポンスが遅い。集中して描いているのだろうから仕方ないんだけど。
智也さんに離婚を切り出したあと、二人でお通夜みたいな雰囲気で食事を済ませ、ひとまず二人の家に帰った。
しかし一度離れて冷静になろうということで実家に帰ることに。
どうして私が別れようと思ったのかなど、怒ったり責めたりすることなく、何も言わずにしたいようにさせてくれた智也さん。
気を遣って何度か話しかけてくれたけど、明らかに無理して笑ってくれているようだった。