独占欲強めな社長と政略結婚したら、トキメキ多めで困ってます

――怒っているよね、こんな自分勝手なことして。

 Valerieとの提携話だってなかったことにされてしまうかもしれない。いや、されて当然だ。

 結婚に承諾したくせに、すぐに尻尾を巻いて逃げてしまったんだから。

「……で、旦那と喧嘩でもした?」
「えっ!」

 ドールにエンパイアラインのドレスを着せて、最終調整をしている晴樹に声をかけられて、分かりやすい反応をしてしまった。

「やっぱりそうなんだ。お前が帰ってくるなんて、そんなことだろうと思った」
「……鋭いね」
「お前は分かりやすいよ」

 視線はドレスに向きながら、晴樹は私に優しく話しかけてくれる。晴樹の指先は器用に動き、天使の羽のようなトレーンを埋めつくすレースを整えている。

「それにしても、よく実家に帰してくれたわね」
「確かに言えてる。アイツ、詩織のことになると人格変わるからな」
「……へ?」

 直樹と晴樹の話している内容についていけなくて、頭の中にクエスチョンマークが浮かぶ。


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