独占欲強めな社長と政略結婚したら、トキメキ多めで困ってます

――夕方。

「お疲れさまでした」

 残業しているスタッフに挨拶をして、私は更衣室で着替えを済ませて外に出た。

「奥様!」

 男性の呼ぶ声がして、周りを見渡すといつぞやの運転手さんがこちらに向かって手を振っていた。

「どうも、お疲れさまです」

 一体どうしてここに? 
 智也ならアンヴィのプレオープンのセレモニーに出席しているはずなのに。

 何か別件の用事があってここにいるのだろうかと思って挨拶をする。

「奥様、どうぞお乗りください」
「え?」
「社長から仰せつかっております」

 なんで、どういうこと?

 と疑問に思いながら、とりあえず言われるがまま車に乗ることにした。

 到着した先はアンヴィ・インターナショナルホテルの正面玄関。運転手さんの手を煩わせて申し訳なかったと思いながら、お礼を言ってから下車する。

 そしてベルボーイが私の方に気が付くと「佐々木さま、どうぞ」と奥へと案内された。


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