独占欲強めな社長と政略結婚したら、トキメキ多めで困ってます

 向こうの意向としては、忙しいので家事をしてほしい、というものと妻がいるということで世間に既婚者であるというイメージを植え付けたいというのが目的。

 それを叶えたらいいとのことで、体の関係は望まれていない。その部分は本当によかった。

 婚姻届を書き上げて、私はValerieの二階にある自宅スペースの奥の部屋に向かう。

 奥にある大きな部屋は父の部屋だ。

 車イスで移動できるように全てバリアフリーになっている。
しかし半身不随の父は自分の力で動くことはできず、主に私たちが車いすを操作しているのだけど。

「お父さん、今日のお薬だよ」
「ありがとう」

 食事を終え、お父さんに病院から処方された薬を差し出す。飲み終えるまでしっかり見届けたあと、ベッドの横に腰掛け話しかけた。

「お父さん、私ね。しばらく仕事でここを離れることになったの」
「そう……なのか?」

「うん。でもお兄ちゃんは一階にいるから、何かあったらすぐにこのコールで呼んでね」
「分かった。ありがとう」

 父の動かない手を握り、ゆっくりと撫でる。

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