独占欲強めな社長と政略結婚したら、トキメキ多めで困ってます
「あのさ、確認なんだけど、今まで何人と付き合ってきた?」
「ゼロです」
「嘘だ」
「本当です」
お互いの息がかかるくらい近い距離で話していると、彼はじっと私の顔を見つめる。お互いに全く目を離さず見つめ合っていたが、先に視線を逸らしたのは佐々木さんだった。
「ということは、必然的に、そういうことも全部未経験……だよな?」
「はい……」
そういうことに、どういうことが含まれているのかよく分かっていないけれど、男性と一対一で何かをするということ自体全般的に未経験なので、おそらくこの回答で間違いないだろう。
「そうか……」
佐々木さんは私に背を向けて、天井を仰いで目元に手を覆っている。
「その点について、何か不都合でも……?」
「いや、君には問題ない。ちょっと想定外の展開で――」
「想定外?」
「気にしないでくれ、独り言だ」
佐々木さんの正面に回り込んで、どんな顔をしているのか覗き込もうとした瞬間、もう一度腕を掴まれて視線がぶつかった。
「あ、の……っ」
勝手に見ようとしたから怒らせてしまった……?