独占欲強めな社長と政略結婚したら、トキメキ多めで困ってます

「今日もありがとう。メシもうまかったし、色々と気配りしてくれて嬉しかったよ」
「いいえ、そんな……」

 そんな改まって礼を言われるようなことはしていない。直樹に見せたら怒られそうなほどヘタな料理だったし、それ以外にしたことと言えば、お風呂の支度をしたくらいだ。

「まだこの家に慣れないよな?」
「そう……ですね。今まで住んでいた家と比べたら、何もかもが高級で、少し戸惑ってます」
「この家にあるものは、全部好きに使ってくれたらいいよ」
「ありがとうございます」

 智也さんを直視できず、俯きながら頭を下げた。

「詩織」
「……はい」

 ふいに名前を呼ばれて、彼の方に視線を向けると目が合う。

「あまり俺のことを見ないようだけど……どうして?」
「そ、そうですか? そんなことありません」
「そうかな? 全く目が合わない。逸らされてる」

 図星だ。

 智也さんと目が合うと、なんだかすごく恥ずかしい気持ちになるから、極力目を合わさないようにしている。
 どうしてこんなふうになるのか分からないから、とりあえず目を逸らしてやり過ごしていたのだけど……。

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