朱莉さんの不可解な一週間
「ご、ご馳走様でした」

振り返ってペコリと頭を下げたあたしに向けられた笑顔も穏やか。


「優しさ」とか「穏やかさ」って言葉は先生の為に作られたんじゃないかって思うくらいに、優しくて穏やかな雰囲気を醸し出す先生はまたスッとあたしの手を掴む。


その行動は凄くさりげなかったのに、あたしの心臓はそれとは反対に大きくドキッとした。


「吉岡さん」

エレベーターに向かって歩き出した先生の歩調は遅い。


「な、何?」

常に視界に入る距離にいたギャルソンがいなくなった店外で、二人きりになった事に緊張したあたしの声はちょっとだけ上擦ってる。
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