朱莉さんの不可解な一週間
またね――って言葉は言わない事にした。


「また」があるような気にならなかった。


もし「また」があっても、それは何ヶ月後か何年後かの事で、この偶然は頻繁(ひんぱん)に起きるものじゃないと悟ってた。


だから。


「先生、元気でね」

自転車に(またが)り軽く手を挙げてそう言うと、あたしはペダルを踏み、いつもの世界に戻ろうとした。


――のに。


「――吉岡さん」

2、3回ペダルを()いだところで突然先生に呼び止められて、油を差してない所為でキィッとうるさく鳴るブレーキを掛け、その場で止まった。
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