朱莉さんの不可解な一週間
少々の足音なんて聞こえる訳はないのに、あたしは何故か忍び足だった。


足音を立てずに本棚の一番奥まで回って、声が聞こえてきた向こう側を覗き込んだ。


そんな事しない方がいいって思ってる自分がいるのに、思考回路が麻痺したあたしは本能の(おもむ)くままに行動して――。


「まだ? どれでもいいじゃん」

「そういう訳にはいきません」

本当に、そんな事しなきゃよかったと後悔する羽目になった。


少なからずあった「もしかしたら」って逃げの考えは、「確実」なものに変わった。


そこには、目を細めて見たって、見開いて見たって、どんな見方をしたって、見間違う事なく瀬能先生いる。
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