朱莉さんの不可解な一週間
そしてその瀬能先生の隣には、あたしより少し若い女の人がいる。


本棚を眺める先生の腕を引っ張りながら、「早く早く」と急かすその女の人は、あたしとは全然タイプの違う可愛い人。


ヒラヒラの服なんか着ちゃって、膝丈のスカートなんか穿《は》いちゃって、踵の高いミュールなんか履いちゃってる。


どっちかと言えばくるみタイプのその女の人は、甘えるように先生を見上げて「早く早く」と繰り返す。


咄嗟に、さっきまでいた本棚の列に隠れたあたしは、この世が酷く酸素不足状態にある気がした。


妙に息苦しい。


眩暈がする。


思考回路が回復しない。
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