朱莉さんの不可解な一週間
「うん。本当。ってか、そんな事で嘘吐かないし。嘘吐いても何の得もないじゃん」

「じゃあ、僕とお付き合いしませんか?」

「……は?」

「出来れば結婚を前提に」

「…………は?」

「考えておいて下さい」

は?――と、3度目の間抜けな声は、そう言った先生が(きびす)を返して逆方向にさっさと歩いていったから、出す事が出来なかった。


その場に取り残されたあたしは、何が何だか分からなくて、(たぬき)に化かされたんだか、(きつね)(つま)まれたんだか訳の分からない状態に(おちい)ってた。


呆然と、自転車に跨って振り返った格好のまま立ち尽くすあたしの視線の先の先生が人混みの中に消えていく。
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