朱莉さんの不可解な一週間
あたしとした事が、典型的な騙しに遭った。


希望の2割が消え失せる。


目を逸らしたい現実が目の前にある。


「まあいいや。それより先生、早く選んで、早く行こ? あたし喉乾いちゃった」

「んー、じゃあ、これで」

「先生って本当、真面目だよね。1冊選ぶのに時間掛かり過ぎ」

「真面目じゃなく、慎重なんです」

「でも不真面目な先生って想像しにくいんだけど」

「というか、その『先生』というのはやめて下さい。僕はもう君の先生じゃない」

「あっ、そっか。ごめん。癖でね」

クスクスと楽しげに笑う女の人の声が遠ざかっていく。
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