朱莉さんの不可解な一週間
メニューを開いた時チラリと見た、先生が頼んだ「和牛特選コース」の値段は、おひとり様15000円。


そんだけあれば給料日までご飯を食べ続けられるのに――って、感謝の気持ちよりも先に考えちゃうあたしは、相当心が(すさ)んでるらしい。


文字通り、夢にまで見たステーキは、いまいち味が分かんなかった。


こんなお店じゃなくていいのにって、気遣いの所為で落ち着かなかった。


終始笑顔の先生に一応合わせて笑ってたけど、慣れないお店の雰囲気と、劣等感からくる気遣いの所為か、今ひとつあたしは楽しそうじゃなかったらしい。


「かなりお疲れのようですね」

「へ?」
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