朱莉さんの不可解な一週間
「はぁ……」

「でも、それ嘘でさ? 社長が前に勤めてた会社って結構大きな会社だったんだけど、その会社から送られてきた()わばスパイだった訳」

「スパイ?」

「馴染みない言葉でしょ!? あたしも初めて聞いた時は『何だと!?』って思った。けど、大きな会社じゃそういうの普通にあったみたい。社長がそう言ってたから嘘じゃないと思う」

「それで、その子が何かを?」

「その頃は会社も軌道に乗り始めていい感じになっててさ。独立してからの事思えばそれって異例の速さなんだけど、社長も性格的に細かい感じじゃないから、ファイルとかデータをデスクの上に置きっぱなしでね」

「……」

「その時の唯一のクライアントの資料と、受注してた仕事の出来上がったデータをデスクに置きっぱなしにしてたんだよね。……って言ったら、もう察した?」
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