朱莉さんの不可解な一週間
先生っていう大人の高い位置から見れば、細かい部分はどうでもよくなって綺麗に見えちゃったりしてるんだろうか。


だから先生はこんなに色気も何もないあたしを――。


「急《せ》くのは大人げないと思うんですけど」

唐突な先生のその言葉に、ハッとして窓から正面に目を向けると、先生はあたしをジッと見つめてた。


ノンフレームの眼鏡の奥にある優しい瞳が、あたしだけを映して、他の何も映さない。


ユラユラと、空調で揺れるキャンドルの光が、まるで先生の瞳が潤んでるように見せる。


「聞かない事には落ち着かなくて」

「へ?」

「なので先に返事を聞かせて欲しいんです」
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