朱莉さんの不可解な一週間
「失礼致します」

金魚みたいに口をパクパクさせるだけで何も言えないあたしを、助けるかのようにそのタイミングでギャルソンがワインを運んできた。


お陰で先生の気は逸れて、あたしからその熱い視線も逸らされて、ワイングラスに()がれる赤ワインに向けられる。


「乾杯もまだでしたね」

ギャルソンが去ると先生はそう言ってワイングラスを(かか)げ、あたしに向かって傾ける。


(なら)うようにあたしもワイングラスを手に取ったけど、その手が(かす)かに震えてたから恥ずかしかった。


「それで、返事は頂けますか?」

一口ワインを飲んだ先生はそう言ってあたしに視線を戻す。
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