いつか淡い恋の先をキミと
いつも本を読んでるキミに、
お昼ご飯を食べ終わった昼休みの残り時間、いつも通りいつものメンバーで教室の真ん中で輪になりながら喋るあたしは、会話の内容そっちのけで放課後の事を考えていた。


今日はあたしの好きな作家さんの新刊が出る日。


だから今日はいち早く本屋さんに行って、その本を買って帰りたい衝動に駆られていた。


「おい、くるみ?聞いてんのか?」


声をかけてきたのはあたしの隣で机に体重を掛けている関口陽平【せきぐち ようへい】――通称、陽ちゃん――。


「ゴメン、なんだっけ?」


「だから、放課後カラオケ行くかっつー話だよ。お前どうする?行くだろ?」


「……うん、行く」


「はい、じゃあ決定。久し振りに六人全員でカラオケ行けるね?楽しもー」


……本屋さんは明日にしよう。


みんなの会話に笑顔で受け答えをしながら、そう心に決めた。


まさか、今日は本の新刊が出るからちょっと先に帰るね、なんて言えるわけがないし。


「くるみ、本当に予定ない? 大丈夫?」


予鈴がなって、席に着こうとしたあたしを呼び止めたのは翼【つばさ】。


「ないけど、どうしたの?」


「いや、お前は自分の予定より周りに合わす癖があるから聞いただけ。ないならいいよ」


言うだけ言ってさっさと自分の席に戻って行った翼は多分この六人の中で一番大人だといつも思う。


だからあぁいう人が彼氏である悠実【ゆみ】は物凄く幸せなんだとも思う。
< 1 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop