いつか淡い恋の先をキミと
そしてあっという間に迎えた放課後にテンションがあがらない。


みんなにバイバイ、と言いながらももう榛名くんの姿は見当たらない。


自分の席で日誌を開いてシャーペンを持つも、ペン先は進まない。


ダラダラと13行をまとまりのない文章でどうにか埋めて、黒板の下のチョークの粉の受け皿を洗いに行った。


廊下の端っこにある手洗い場の更に端で受け皿を綺麗になるまで洗ってから教室に戻ると、そこにはいないはずの人物がいた。


「良かった、一ノ瀬さんまだいてくれて」


「え…なんで、」


「教室にいないから、一瞬もう帰っちゃったのかと思った…」


そう言いながら何故か息が切れてるように見える榛名くんは、


「はい、これ…」


鞄の中に手を入れて、某有名本屋さんのブックカバーがしてあるそれをあたしに差し出した。


「これ、って…?」


受け取りながら、疑問を口にしたあたしに、


「昨日…かな?俺が一ノ瀬さんに勧めた本」


ブックカバーを外して、本の表紙を見せてくれた。


「本当は、ね…今日の朝持って来ようと、思ってたんだけど…忘れて…それよりゴメンね、ちょっと走ったから息が続かなくて、」


「ううん、気にしないで。大丈夫?落ち着いてからでいいよ。あ、それよりも用事の方はいいの?」


「…うん、これが用事」


「え?じゃあもしかして、これをお家まで取りに帰ってたの?」
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