いつか淡い恋の先をキミと
まさか、と思いながら半分期待してそう言うと。


「そうだよ。一ノ瀬さん、今日で週番終わりでしょ?だから今日しかないと思って…」


「なんで、そこまでしてくれるの?」


「一ノ瀬さんにその本、読んでもらいたかったんだ。それね、俺が一番大切な本なんだ」


「大切?」


「うん、大切」


そう大切だと言った榛名くんの顔がどこか寂しそうで、もうこれ以上は聞いちゃいけないと境界線を引いた。


「一ノ瀬さんだったら、その本の良さ分かってくれると思うから」


「ありがとう、榛名くん」


嬉しくて嬉しくて思わず涙が出そうになったけど、そこは堪えた。


「ちょっと待ってて、」


そしてあたしは本を受け取る前に鞄からお財布を出して教室を駆け出した。


向かう場所は購買の横にある自動販売機。


今の季節は夏で、しかも放課後だからお茶やスポーツ飲料系の飲み物は全部売り切れていた。


だから炭酸飲料の飲み物を買って、あたしは教室まで戻ることにした。


「榛名くん…、これ、飲んで?」


「え、いいの?」


「うん。これくらいさせて」


「ありがとう、一ノ瀬さん」


そう言いながらあたしの買ってきた飲み物を受け取って、ペットボトルの蓋を開けた榛名くん。
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