いつか淡い恋の先をキミと
でもその刹那、


「うわ…っ!」


炭酸飲料である飲み物がプシューッと音を立てながら、蓋を開けた瞬間、中に抑え込まれていた圧力が一気に噴き出した。


しかもそれは榛名くんの顔面に直撃というひどいもので。


「あ、あたしが走ってきたからだ…」


その理由が分かった瞬間、居た堪れない気持ちになった。


「ゴメンね、榛名くん…」


そして鞄からタオルを取り出して、手渡そうとするあたしに、


「どうして謝るの?一ノ瀬さん俺の為にこれ買ってきてくれたんでしょ?」


少し長い前髪をかきあげながら優しい言葉を言って、優しく微笑んでくれた。


初めて見た榛名くんの前髪が掛かっていない顔は、思春期特有のニキビなんかも全然なくとても綺麗で、ちゃんと鼻筋も通っていて、くっきり二重の目に、形のいい唇。


文句の付けようがないその顔に、なんというか驚いた。


今までと言っても一週間だけだけど、榛名くんの顔がどうとか考えたこともなくて。


確かに前髪は少し本を読むのには邪魔そうだな、とかはあるけれど。


でもまさかこんなに整った顔をしていただなんて。


しかもそれが割と自分のタイプの顔だなんて。


……もうやだ。


だってこんなの――


「一ノ瀬さん、タオル使っていいの?汚れちゃうよ?」


「え、あ、そんなの全然!」


「ゴメンね、ありがとう。あ、それとこの本、はい」


タオルを片手に違う手の方であたしにその『大切』な本を渡してくれた。
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