いつか淡い恋の先をキミと
「…それはあたしも陽ちゃんや翼が大事だからだよ」


「うん、そうだね。だからそれが少し羨ましいんだ」


「でも今はもう、榛名くんのことも大事だよ」


「え?」


「そりゃあ過ごした年月が違うから、陽ちゃんや翼とは色々違うけど、それでもあたしは榛名くんも大事」


「……一ノ瀬さん、」


「だからそんな悲しい顔しないで?」


「うん、ありがとう……じゃあ俺の高校に入ってからの最初の友達になってくれる?」


……と、友達。


「うん、もちろんだよ」


「…みんなが一ノ瀬さんを大事にしたくなる理由が分かる気がする…」


え、と聞き返したあたしに何でもない、と言いながら話は変わったようで変わってない内容が続けられた。


友達だと言われたことで一線を引かれてしまったような気がするけど、今はまだいい。


あたしはもう君のことを友達だなんて思えないけど、君があたしのことを友達だと思ってくれるなら構わない。


「榛名くんはどうしてみんなと絡まないの?」


一瞬、聞いちゃいけないことかと思って冷やっとしたけど、帰ってきた声のトーンでそうでもないことが分かった。


「集団行動するの得意じゃないんだ」


「でもみんなと楽しくしたいとは思うの?」


「ううん、それももう小学生までだった。中学に入ったら何だか友達なんかいらないような気がしてきて、得意じゃないことするぐらいなら一人で本読んでた方が楽しいって思い始めた」


「…そうなんだ」


「それに『いつも一人で本読んでる奴』っていう位置付けも楽でありがたかったし」


「そこはありがたく思っちゃうんだ」
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