いつか淡い恋の先をキミと
後悔するも時既に遅かりし、
Side Tsubasa



最近、くるみの様子が変。


変と言ったら可哀想だけどいつもとは違う。


どこか上の空でふわふわしてる。


幸せそうというか何というか、見ているこっちにまで幸せオーラを分け与えてくれるかのようなそんなくるみに俺たちは最初誰も何も言わなかった。


何かはあったんだろう、とみんなそれぞれに思ってはいたけど口に出すのは何故か憚られていた。


その理由はこいつ――陽平――である。


ここ最近ずっと週に一、二回は俺たちと一緒に帰ることをしないくるみに一番疑問を持っていた人物。


確かにくるみは何を訊いても答えないし、ちょっとね、と言うだけで話をはぐらかす。


でもそれは聞かれたくないからで、そんなことは俺たちだけでなく陽平も分かっていた。


それでも一緒に帰らない理由が知りたいのは、恋心故【ゆえ】だろう。


俺たちはみんな陽平がくるみのことを好きなことには気が付いてる。


それに気が付いていないのはおそらくくるみだけだろう。


純粋で素直なくるみはまさか陽平が自分のことを好いているだなんて夢にも思っていない。


陽平も好きなら告白すればいいものをしないからこの歳になってもまだ関係は平行線の一途を辿っている。


そしてとうとう陽平の我慢の限界が来たのは、くるみが俺たちと一緒に週に一、二回帰らないと言い出してから三週間程が経過しようとしていた頃。


「くるみはなんで俺たちと帰んねぇんだよ」


くるみが今日も一緒に帰れないや、ゴメンねと言って来て去って行った後、イライラしながらそう呟いた陽平に、
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