いつか淡い恋の先をキミと
榛名くんとの放課後の密会――と言っていいのかは分からないけど――はまだ続いており、その一回一回の時間が楽しくて仕方がなかった。


だから今日も誘おうかなぁ、それに今日の休み時間を使えば榛名くんに借りた本もようやく読み終える事が出来る気がするし、なんて色々と口実を考えながらいつも陽ちゃんと翼と朝に待ち合わせをしている場所まで向かっていた。


それに榛名くんと話すようになって、別にクラスであたしが本を読んだところで何も可笑しくないんじゃないんだろうかと思い始めた最近。


まだその行為に及んだことはないけど、今までどうして自分があれだけ頑なに教室で本を読まなかったのかを疑問に思ってしまう程にあたしの心境は変化した。


多分、これも榛名くんのおかげだと思う。


君と少しでも多くの本について語り合いたい、その恋心が及ぼす力なんだと思う。


「あれ?今日陽ちゃんはいないの?」


待ち合わせ場所に来ると、いつもは先に来ている陽ちゃんの姿がなくて翼に尋ねた。


「あー…うん、なんか後から来るって、」


「そっか。珍しいね、」


「そうかもしれない…な、」


「翼?」


「ん?」


「どうかしたの?」


「なんで?」


「なんか変だよ?」


「そうかな、そんなことないよ」


気にし過ぎ、とそこで話を変えられ、翼に何かあったんだろうかと考えたけど触れられたくないことに無理矢理触れるのは違うと思い、問い詰めることはしなかった。


そして学校に着いてから、いつも通り読書してる榛名くんの元に行く。


「……榛名くん、今日の放課後いい?」


まだ未だにちょっとだけ断られるんじゃないんだろうか、という思いがあるから緊張を捨て切れない。
< 35 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop