いつか淡い恋の先をキミと
「いいよ」


でもそんなあたしの思いを払拭してくれるかのような優しい返答に毎度の事ながら胸が高鳴る。


「今日で多分ね、榛名くんに貸してもらった本読み終わると思うの。だから――」


「くるみ!」


――またあたしの感想聞いてくれる?


その言葉は喉の奥に呑み込まれ、声のした方を見ると響子と悠実と翼があたしを呼んでいた。


「ゴメンね、また後で」


だから榛名くんに断りを入れ、その三人の元へ行った。


「どうしたの?」


あたしがみんなの顔を窺いながら、首を傾げたその時、教室の扉から陽ちゃんが入って来るのが見え、


「陽ちゃん、今日の朝寝坊したの?」


そう声を掛けたら、


「……」


絶対に聞こえていないはずなんてないのに、無視されてしまった。


「陽ちゃん、怒ってるの?どうしたの?」


いくら意地悪な陽ちゃんと言えど、今まで無視されたことなんて本当になくて、驚いたあたしは陽ちゃんの元に駆け寄る。


「……陽ちゃん?」


だけどそれでも陽ちゃんは返事をしてくれない。


「ねぇ、本当にどうしたの?」


「くるみ、今、陽平機嫌悪いみたいだからさ、こっちおいで」


終いには翼があたしのことを呼びに来て、引っ張られるかのように陽ちゃんから引き離された。


よく分からないけど、今はそれが賢明らしい。


翼のいう事は聞いておいた方が安全だとあたしは知ってる。
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