いつか淡い恋の先をキミと
それから先生が来て朝のホームルームが始まり、少し陽ちゃんのことは気になりながらも、まぁ誰にだって話しかけられたくない時はあるか、と楽観的に考えていた。


それに一時限目が終わる頃には、そんな陽ちゃんのこともすっかり頭の片隅に追いやられていた。


おまけに二時限目の数学の時間には黒板に二名程、問題の解答を書けという指示で先生から指名されたのはなんとあたしと榛名くんだった。


そんな些細なことに先生に心の中で感謝をしながら、あたしたちが黒板に解答を書いている間、クラスのみんなの雑談が始まり騒ついた教室の教卓の上で、


「この問題、これで合ってるかな?」


榛名くんに尋ねると、


「うん、多分合ってるよ。俺と答え同じだから」


そう言って、ノートを見せてくれた。


「ありがと、榛名くん」


「ううん、いいよ」


あぁ、もう幸せだ。


出来るならこの教卓の上から降りたくないと、変なところに名残惜しさを感じながら席に戻った。


君とこんな時間に喋ることが出来る相手になれて嬉しい。


うふふ、と顔を引き締めなかったら言ってしまいそうになるのを抑えて、昼休みまでの授業をやり過ごした。


そして昼休み開始のチャイムがなり、出来るだけ急いでお弁当を食べて残りの本を読む時間を確保し、机の上で本を広げた。


その世界に入り込むまで多分一分も掛からなかったと思う。


でも更に入り込んでから一分も経たないうちにあたしの世界は元に戻った。


だって手元からいきなり本が引ったくられ、何事かと思いその先を目で追うと、陽ちゃんがあたしの本――本当は榛名くんから借りた本だけど――を取り上げ、そのままその勢いを使って後ろに放り投げた。
< 37 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop