いつか淡い恋の先をキミと

そして放課後、六人でカラオケに行く道中に本屋さんを見つけたあたしは一目散にその中に入りたい衝動にまたしても駆られたけど、そこは堪えた。


みんなはあたしがいつも色んな本を愛読していることを知らない。


別に隠すことじゃないし、知られて困るものでもないけれど、あたしはみんなに合わせていたい。


活字なんて一切読まない陽ちゃんや、スポーツの雑誌などしか読まない翼、ファッション雑誌や少女漫画などを好んで読む悠実や響子に合わせていたかった。


だから余計にクラスで堂々と本を読んでいるあの人の事が気になるのかもしれない。


それから十分程歩いた先のカラオケ屋さんで、あたしたちはボックスに入り盛り上がり始めた。


「くるみ何歌うー?」


「何にしよっかな…」


「てかさー、三人で去年の文化祭でやったやつ踊らない?」


響子の出した提案に乗ったのは悠実であたしもそれに乗っかった。


そしてその曲を入れ、踊り始めたあたしたちの横に丁度サビのところで拓哉が乱入してきて、意外と上手い踊りを披露された。


「すごっ、上手いじゃん、拓哉!」


「だろー」


「ちょっと尊敬したよ!」


「ぶっちゃけ俺、女装したらくるみよりも可愛い自信があるねー」


「なんか凄く失礼なこと言われた気がするけど、でも拓哉本当に顔綺麗だしあたしよりも全然可愛いと思うよ!」


拓哉のあまりのダンスの上手さにそう言うと、


「くるみはそれを素で言っちゃうんだからなー、憎い」


拓哉にあまりよく意味の分からないことを言われ、


「ただ、単純でバカなだけだろうが」


更には陽ちゃんに物凄く失礼なことを言われた。
< 4 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop