いつか淡い恋の先をキミと
あたしが話しかけたのがいけなかったのかな……。


何がダメだったんだろう……。


と、そんな考えても今更どうにもならないことをエンドレスに考えてしまう自分にいい加減嫌気がさす。


だってこうして終業式が終わってうちのクラスがパイプイスの片付けの当番のため、それが終わってからそれぞれが個々に体育館から教室に移動する間にも榛名くんを見つめている自分がいる。


嫌われてるのは分かっているのに。


あたしがいくら見つめても榛名くんはこっちを見てくれないのは分かっているのに。


それでもやめられない。


出来ることならこの想いを伝えてしまいたかった。


伝えてから嫌われていると知りたかった。


それが単なる自己満足にしかならないことは分かってるけど。


それでも行き場のないこのあたしの中に燻る想いが今となって溢れ出してしまいそうで物凄く困る。


大声で君が好きだって言ってしまいそうになる。


トボトボと歩きながらぼんやりと榛名くんの後ろ姿から未だに目を逸らせずにいて、ほんの少し時間が経過した時だった。


体育館からグラウンドへと出ようと移動しているその途中。


榛名くんの後ろから友達を追いかけようとしていた女の子が走り抜けて行った時、【終業式】と大きく書かれた看板に少しぶつかって今まさにそれが倒れようとグラグラしていることに気が付いた。


そしてその瞬間駆け出している自分がいた。


お願い、倒れないで。


そんなことを願っていたのかは覚えていない。


「――榛名くんっ! 危ない!」


走って来た勢いを利用してそのまま榛名くんを突き飛ばしたはいいものの、自分の方に看板が思いきり倒れてきた所であたしの意識は途切れた――はず。


「一ノ瀬さん…っ!」


それを見て周りの子たちの悲鳴が聞こえてきた気がしないでもない。


だけど本当に意識が途絶えようとしていた時に考えていたのは榛名くんのことだった。
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