いつか淡い恋の先をキミと
そして結局――その日にくるみが目を覚ますことはなかった。


次の日から夏休みが始まる俺たちはその日は一旦家に帰って、明日また出直すということで家路に着いた。


帰り道、誰一人言葉を発することがなかったのは言うまでもない。


そして翌日俺たちがまた五人で集まって、くるみの病室の前まで行き、その個室の扉を開けるとそこには榛名光流がいた。


多分それを見た瞬間此処で暴れ出す人間がいると本人以外は分かっていた。


そしてその予想たるものは外れない。


「…なんで、お前がこんなとこにいんだよ!帰れよ!」


「……ちゃんと御両親の許可はもらってあるよ」


「そんなことどうだっていいんだよ! お前のせいでくるみはな…っ、こんなことになってんだよ!」


「……」


「お前なんかのせいで!」


「陽平、そこまでにしときなよ。言っても仕方のないこと言って苦しませるのは違うだろ」


「でも…こいつのせいで、くるみは…っ!」


「陽平、いい加減にしろ」


「……くそ!」


舌打ちをしながら、そばに置いてあった椅子を蹴り飛ばそうとした陽平は、未だ目を覚まさないくるみの顔を見て思い止まった。


「……榛名くん、だよね? くるみのお見舞い?」


「…うん」


「陽平が失礼なこと言ってゴメンね。悪い奴じゃないんだけど、くるみのこととなるとちょっとね」


「…いや、俺のせいだから、一ノ瀬さんがこんなことになったの」


「……」


「今日は帰ります。一ノ瀬さんも目が覚めた時にいて欲しいのは俺じゃないだろうから」


一人そう言って立ち上がろうとした榛名光流をまるで引き止めるかのように、


「…ん、…、」


くるみがゆっくりと目を覚ました。
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