いつか淡い恋の先をキミと
「くるみ!」


「くるみ…っ、よかったぁ」


悠実と響子が同時に声をあげ、くるみの名前を呼んだ。


相当安心したのか、悠実の目には涙がたまっているのが見えた。


それにこの中で一番くるみのことを心配していたであろう榛名光流は、帰ろうとした間際のくるみの目覚めに安堵の表情を浮かべていた。


「……一ノ瀬さん!」


「……」


「……ごめん、俺のせいで…」


「……」


「……無事でよかった」


「……」


「……本当にごめん」


「……」


「……」


「……」


「……い、ちのせ、さん?」


「……くるみ?」


何かおかしかった。


何かが違った。


くるみに声を掛け続ける榛名光流に返事しないことがそう思わせたのかもしれないけど。


でも。


くるみじゃない、ふとそんなことを思った。


そしてその予想は、


「……だ、れ?」


外れることを知らない。


「……あはっ、どうしちゃったの、くるみ。目の前にいるのは榛名くんでしょ? 頭打って忘れちゃった?」


響子がくるみに冗談を交えて喋りかけるも、


「……」


響子を見るそのくるみの目は、響子をも分かっていない様子だった。
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