いつか淡い恋の先をキミと
「じゃあ今日は帰ります、おじさん」


「あぁ、そうしてくれると有難い」


「また明日来ます」


そう言って、とりあえず病院をくるみ以外の5人と椎名光流の6人で出た。


俺と陽平はさっき少しだけでもおじさんと喋ったおかげか、なんとか落ち着きは取り戻せていた。


だけど、他のメンバーは……。


強いて言うならば、それは御通夜みたいな雰囲気で。


「……」


「……」


誰一人として言葉を発しな――


「榛名くん、」


――いと思っていた。


だからみんな声の主である響子の方を向き、響子の次の言葉を榛名光流であるかのように待った。


「……」


「くるみがこうなったの、あんたのせいなの」


「……わかって――」


「全然分かってない!」


「……」


「確かにくるみはあんたを庇って怪我した! でもあたしが言いたいのはそんなことじゃない!」


「……」


「怪我しただけならこんなに言わない! なんでくるみが記憶失くさなきゃならなかったのか分かる?」


「……」


「さっき先生が話してるの聞こえた。記憶をなくすのは心因性が原因のことが多いって。それって、あんたが酷いこと言ったからでしょ! あそこまで言う必要あった? なかったよね? あの後くるみがどれだけショック受けたかあんた分かってんの?」


「……」
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