いつか淡い恋の先をキミと
「どんだけ泣いたか分かってんの?」


「……」


「『榛名くんの大切な本汚しちゃった…どうしよう』ってずっと泣いてたんだよ。陽ちゃんとも口利かなくなるくらい、ずっとそのこと気にしてたんだよ、くるみは」


「……嘘、」


「嘘じゃないわよ! あんたあたしのことバカにしてんの? くるみが人のもの汚して平気な奴だと思ってんの? 嘘だと思うんならね、なんでくるみがあんたのこと庇ったのか考えてみなさいよ!」


「……」


「あんな広い体育館でなんで他の誰でもなくくるみが走ってあんたのこと庇ったのか考えたことないの? バカじゃない――」


「響子、もうやめとけ」


「――でも…っ、」


「くるみの気持ち汲んでやろうよ」


「……分かった」


響子も多少言い過ぎたと思う節があったのだろう。


俺が一言声を掛けると潔く引き下がった。


「ごめんね、榛名くん…ちょっと言い過ぎた、かも」


「いや、そんな……」


「今日はあたしもう帰るね。じゃあみんなばいばい」


そう言うと響子はまともに俺たちの顔も見ずに帰って行った。


それからは俺たちもすぐに解散した。


そして俺は陽平と二人で並んで歩いていた。


「……響子に持ってかれちまったな」


「ん?」


「本当は俺だってあいつにもっと文句言ってやりたかった」


「あいつって、」


「榛名に決まってんだろ」
< 51 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop