いつか淡い恋の先をキミと
「あ、この写真…」


「ん?」


「私と陽平くんの二人だけだね」


「どれだ?」


「これ。陽平くんって昔から綺麗な顔してるんだね」


「……」


何の気なしに言った言葉だったけど、思い返してみればそれは、イケメンな人にイケメンだね、と言っているようなもので。


途端に自分の顔が赤くなったのが分かった。


「ごめ…っ、陽平くん、私そんなつもり…」


ってどんなつもりかわかんないけど。


「……“陽平くん”じゃねぇだろ」


「え?」


「お前いつも俺のこと“陽ちゃん”って呼んでただろ」


「……ごめんね、覚えてないの……」


「……じゃあ、」


「ん?」


「俺と…お前が付き合ってたことも覚えてねぇんだな…?」


「……え?」


「……」


嘘、でしょ。


頭が働かない。


だけど。


こんな状況で陽平くんが嘘吐いたって何のメリットもない。


だったら私が覚えていないことの方が可笑しいんだよね。


そんな大切なこと。


「……付き合ってたんだね、私たち、」


「…いや、ちが」


「私はそんな大切なことも忘れちゃってるんだね…ごめんね」


「そうじゃなくて…っ、」


「今日は帰るね」
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