いつか淡い恋の先をキミと
「……一目だけでも元気な姿見たかったから」


「……」


なんで、なんでそんな悲しそうな顔するの?


なんでそんな意地悪なこと言うの?


本当は優しいんでしょ?


「だって俺のせいで怪我した女の子が元気かどうか気になるでしょ。だからだよ。たいした意味なんてない」


「……」


「俺は君とのこと、忘れることにする。君のことも好きじゃない。だから君も俺のことなんて忘れて、関わるのをやめた方がいい。それが君のためだから」


……。


そんな言葉だけ残して、この場を去っていく名前も知らない男の子の後ろ姿を見て、叫びたくなった。


行かないで、って。


おいてかないで、って。


一人にしないで、って。


好きじゃない、なんて言わないで、って。


忘れろ、なんて言わないで、って。


理由は分からない。


だけどあの人と離れたくない、離れちゃいけないって何故かそう思った。


自分と関わらないのが私のためだと言ったあの人と――


「くるみ!」


「……よ、うへいくん…?」


後ろを振り返ると息を切らした陽平くんがこっちまで走ってきていた。


あぁ、一人じゃない。


あの人に置いてかれて一人だと思ってたところに陽平くんは来てくれた。


傍にきてくれた。


ただそれだけで――


「陽平くん…っ、」


「くるみ、泣いてんのか?」


「何処にも行かないで…っ、」


「……っ、あいつに何された!?」


「何も、されてないよ…」


「本当か?」


「うん」


「ならいい。なぁくるみ。お前は何も覚えてないかもしれないけど、それでも俺はお前のこと好きだからこれからもずっと傍にいて欲しい」


「……陽、ちゃん……?」
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