いつか淡い恋の先をキミと
それに気付いた時にはもう、
ずっと気になっていることがある。


だけど気にしないようにしていたのは陽平くんが嫌そうだから。


私との過去をいらないと言ってくれた陽平くんに対して私ばかりが過去に囚われてるのはなんだか悪い気がして考えることすら罪悪感を感じていた。


だけどそうは言ってられないような出来事が数日前にあってから、頭の中はずっとそのことに支配されてる。


あの人と私の関係は――…そう。


考えていて、前に言ってたのを思い出した。


俺のせいで君が怪我したとかなんとか。


関係しているのはそこだけだとしたら、確かにあの人は私に対して負い目を感じてるのかもしれない。


だけど、みんなは私に違うことを言ってた。


私が怪我した理由は看板が倒れてきたからであって、そのショックか何かで記憶を失ったって。


看板が倒れてきた理由があの人だってことなのだろうか。


もしそうだとしてもそこを隠す理由は何なのだろう。


そこに隠す理由が見出せない。


見出せないけど、それを周りに聞くのが間違いだということも察することが出来るから何も出来ない。


ただ悶々と特に何もすることのない日々を消化していくだけの毎日。


そこに一つだけ色があるとすれば、それは陽平くんが来てくれること。


あの日、あの人と別れてから明らかに陽平くんの様子がおかしかった。


強引に家に連れて帰られてからもお互いに無言で、気付けば30分は経っていた気がする。


そしてようやく我に返った様子の陽平くんは、


「くるみはあいつのことが気になるか?」


深刻そうな顔でそう聞いてきた。


いつもはしないそんな顔に自ずと答えは決まっていた。


「気にならないよ」


陽平くんが気にして欲しくないなら、それを表には出さない。


「…さっきね、陽平くんのこと追いかけたの…そしたらね、後ろ姿を見間違えちゃって」


「あ、さっきは悪かった。いきなり怒鳴ったりして」


「ううん、その事はもういいの」


「てか、追いかけてくれたんだな」


「うん」


陽平くんもあの人と同じことを言うんだね。


「ならもういい。お前が気にしてないって言うなら俺も気にしない」


ごめんね、嘘吐いて。


でも陽平くんが嫌がるようなことを言いたくないから。


「くるみ」


「うん?」


「お前のこと、凄ぇ好きだ」


「……えっと、」


「俺は絶対お前を一人にしないから。記憶失くしてお前が寂しいって思ったとしてもそばにいるから」
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