いつか淡い恋の先をキミと
「……うん、」


「だからさ、俺のこと好きになってくれよ、くるみ」


そう言って徐にこちらへ近付いてきた陽平くんは、私の腰に手を回して、


「お前のこと誰にも渡したくねぇ」


抱きしめながら、


「今すぐにとは言わねぇから」


耳許でそう囁くように紡ぐその声はやけに切実で、


「…私、好きになるよ、陽平くんのこと」


気が付いたらそう答えていた。


あなたが望むなら、私はいつだって答えるよ。


どうしようもなく寂しい時、そばにいてくれたのは陽平くんだから。


その陽平くんが望むなら、私は出来る限りのことはするよ。


好きになってと言うのなら、私はきっとあなたを好きになる。


今思えば、それは願望に近かったのだと思う。


二学期が始まる前、明日から学校で知らない人がたくさんいる世界に飛び出すのが不安だったのだと、言い訳じみた内容が頭に浮かぶ。


最低なのは私だったのに、全てを人のせいにして周りを見失った。


今気付いたのでは遅いのに、この時の私に少しでも助言を出来ていたならよかったのにと、そんな邪な考えも浮かぶ。


そしてこんなに後悔するのはもう少し先のお話。
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