いつか淡い恋の先をキミと
私は一人じゃないと思えるこの空間が好き。


ムードメーカーの拓哉くんがいて、ツッコミ役の響子ちゃんがいて、しっかりしてる翼くんとその彼女の悠実ちゃんがいて、そして私のことを考えてくれてる陽平くんがいて。


ずっとみんなと一緒にいられると信じていた。


ただ信じたいことを信じていたいだけだったのに、私はそれを自分で壊すとは思ってもみなかった。


拓哉くんの話が終わって、みんなで取り留めのない話をしていた時、教室が再び騒ついた。


その原因がなんなのか分からず、みんなが送る視線の先を追っかけてみれば、そこにはあの人がいた。


教室へ入って、奥の席の一番後ろで、窓際だけど唯一窓でなくて壁の席。


陽の当たらないその席に着くまでの一挙一動をみんなが見てた。


ただ凄いと思ったのは見られてると分かってるのに、動じないその姿勢。


机に鞄を置いて、椅子を引き座るその動作。


続いて鞄から何かしらのブックカバーが付いている『本』を取り出して、読み出すまでの行動。


どれをとっても動揺なんて感じられなかった。


私には無理だったその貫き。


すぐに陽平くんに助けを求めてしまったさっきの行動にまるで見本を見せられているかのような気にさせられた。


なんであんなに動きが綺麗なんだろう。


そう思わずにはいられない何かを感じた。


そして『本』を読んでいるあの人のことがとても気になった。


この間、陽平くんとあの人に指摘された『本』。


二人が反応する『本』には何かあるのだろうかと勘繰られずにもいられない。
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