目覚めたら、社長と結婚してました
「プロポーズの言葉は? どういうタイミングで言われたの? いいなー。あんな彼に毎日愛されて」

「奈々だってずっと付き合ってる彼氏がいるじゃん」

 うっとりする奈々に私は小さくツッコむ。奈々にはたしか付き合って三年ほどになる彼氏がいたはずだ。同じ会社の人で半同棲状態だと聞いている。

 私の指摘に、奈々は苦いものでも舐めたかのような顔になった。

「うーん、でもね。この前なんて私の誕生日、素で忘れられてたし」

「ええ!?」

 さすがにこれは笑って流せる話ではなかった。奈々の表情もどこか複雑そうだ。

「いや、彼もずっと仕事が忙しそうだったし、私も自分から誕生日の話題を振らなかったんだよね。とはいえ毎年お祝いしてくていたから、まさか忘れられているとは思わなかったけど」

「わざとじゃないんでしょ?」

「もちろん。指摘したときの彼の真っ青な顔と言ったら……」

 そこで奈々は長く息を吐いた。

「すごく謝ってくれたし、悪気がないのもわかっているけど……やっぱりショックだよね、忘れられるって。私のこと本当はどうでもいいのかなって思っちゃったり」

 私の胸がずきりと痛む。奈々と目が合い彼女は心配そうに笑った。

「なに、柚花が泣きそうな顔になってんのよ」

「だって……」

「私のことはいいんだって。それよりせっかくの新婚なんだから、幸せな話を聞かせてよ」
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