目覚めたら、社長と結婚してました
 両親に事情を聞いてみようか、という考えが浮かんだがすぐに取り消す。もしも両親がなにも知らないなら、余計なことは言わない方がいい。

『彼女自身も彼女の両親の事業もお前に救われ、お前は両親を始めずっと結婚しろって煩かった周りを黙らせて納得させた』

 私のこと、私の両親のことを助けてくれたのかな。

 彼ならきっと結婚相手は選びたい放題だ。あえて私を選んだのは、私と結婚したのは、交換条件みたいなものだったのかもしれない。

 一社員の家庭事情に社長が介入するのは不自然だけれど、結婚して妻となっていれば話は別だ。

『医者にも言われているんだ。余計なショックを与えたくない』

 本当のことを話してくれてもよかったのに。玉城さんの言う通りなら、私も納得して結婚したのだろう。もしかすると私からお願いしたのかもしれない。

 割り切った関係でも、契約結婚でも、今になってこんな真実を知るくらいなら、初めから教えて欲しかった。

 無駄に優しくしないで欲しかった。そうしたらこんなにも傷ついたりしなかったのに。

 駄目だ。やっぱりショックだ。馬鹿な自分。彼の振る舞いに愛されている、なんて錯覚して。

 目の奥が熱くなるのを我慢し、さらに身を縮めて丸くする。

 苦しい。結婚しているから、記憶をなくす前の私もそうだと思ったから。だからなんの疑いもなく私は怜二さんに惹かれているんだって。そんなことない。
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