目覚めたら、社長と結婚してました
　でも他のことでは上手くいっている、と思う。多少のスキンシップだって。それは怜二さんなりの妥協なの？

　疑問が浮かんでは消えを繰り返す。でも、どれも明確な答えは出せない。私は頭を振って一度、考えをリセットさせた。

　両親のことがあったとはいえ、誰と結婚しても同じなのに私を選んでくれた。誰でもよかったのなら、私を選んでよかったって思ってもらえるように頑張ればいいだけ。
　
　自分に言い聞かせて、私は自分の心の奥底にある気持ちに蓋をした。

　それから頑張ろうと思えば思うほど、家での私は空回ってばかりだった。料理を失敗したり、怜二さんに頼まれていた用事を忘れたり。

　仕事だけはミスできないと気が張り、精神的に追い詰められていく。

　そして彼に触れられるのが怖くなった。前はあんなに癒されて、幸せだったのに。

　彼が私に触れる理由を考え出すと不安になってくる。

　結婚しているからしょうがなく？　それともキスくらいまではなら、なんでもないこと？

　妙な緊張感は怜二さんにも伝わり、心配そうな面持ちで「どうした？」と尋ねられても理由が言えなかった。

　怜二さんの切なそうな顔を見て、その原因が自分にあるのだと思うと、さらに悲しくなってくる。
　
　私、奥さんとして全然駄目だ。怜二さんには両親のことでもお世話になりっぱなしなのに。愛想尽かされても文句言えない。このままじゃ私……。
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