目覚めたら、社長と結婚してました
 わずかに気持ちが落ち着き、それに比例するように体の力を抜く。

 彼からのキスは止まることがなく応えるように少しだけ口を開けると、軽く唇を吸われて徐々に口づけは深いものになっていった。

 強く抱きしめ直され密着具合が増していく。スマートなキスの仕方なんてわからない。息継ぎのタイミングさえ掴めなくて、されるがままなのもいいところだ。

 怜二さんとの余裕や経験の差を見せつけられている気がして悔しくなる。

「んっ……ん……」

 甘ったるい自分の声に胸が詰まりそうだ。唾液の混ざり合う音と濡れた唇が触れ合う度に漏れるリップ音が羞恥心を煽っていく。

 舌を絡めとられ、いいように刺激されていき私はすがるように自分から怜二さんにくっついた。

 どうしよう。これじゃ、もっとって求めているみたいかな。

 ふと冷静になり恥ずかしさでキスを終わらせようとしたら、それを察した彼に後頭部に手を添えられ、逃げられなくなった。

 そのままベッドに背中を預ける形で押し倒される。そして怜二さんのタイミングで、唇はそっと離れた。舌の感覚が麻痺していて息が上がる。

「柚花」

 至近距離で放たれた熱っぽさを孕む彼の声に体が震えた。本を読んでいるときにも、仕事をしているときも見たことがないような情欲の色を宿した瞳に捕えられる。

 無造作ながら艶のある黒髪、整った顔立ちがさらに迫力に拍車をかける。襟もとから覗く鎖骨に目を奪われ、改めて怜二さんが「男の人」なんだと実感した。

 肩で息をしながらじっと上になっている怜二さんに視線を送る。
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