目覚めたら、社長と結婚してました
「っ、私」

 ふと、なにかに突き動かされるように沈黙を裂いて私は唐突に声をあげた。

「愛されたいんです、怜二さんに」

 ほぼ無意識に声に出した告白に怜二さんの瞳が揺れた。そして困ったように笑う。

「ここですごい殺し文句だな」

「ちなみに今だけの話じゃないですよ」

「わかってる。一生かけて愛してやる」

 そう告げた彼の優し気な表情に泣きそうになった。溢れ出る想いをどうすれば伝えられるんだろう。

「好き」

「ん、俺もだよ」

 おでこ同士をこつんと重ねて、目が合ったと思う間もなく口づけられる。

「お喋りはここまでだ」

 打って変わって真剣な声色の怜二さんに今度は私が微笑んで見せた。そして同意を示すように自分から彼にキスをする。

 結婚してから恋をすればいいと思っていた。私と恋をして、すごく愛してくれる人なら誰でもかまわないって思っていた。でも、それは間違っていたみたい。

 怜二さんじゃないと駄目だった。

 もう一度やり直させてくれたから。どんな状況でも私は彼に恋に落ちるんだってわかった。だから大丈夫。

 私達には結婚するまでに愛を語らう時間がなかっただけ。これからたくさん愛し合っていけばいい。

 怜二さんがずっと隣にいる未来に想いを馳せながら、今は大好きな人に愛される幸せを噛みしめて私は彼に身を委ねた。

Fin.
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