目覚めたら、社長と結婚してました
柚花には伝えていないが、近藤さんは誰もが知る大手不動産会社の社長を務めていた。
過去形なのは現在は社長の座を息子に譲り、近藤さん自身は顧問という立場を取っている。実質、会社経営はほぼ息子に任せっぱなしらしい。
元々自宅に知り合いを招いて酒を振る舞うのが趣味だったこともあり、社長の座を退いてからは好きが高じて念願のバーをここにオープンさせた。
だからここは営利目的でもなく、限られた人間しか訪れることがない。
ちなみにこのビルも彼の持ち物だ。そういう立場だったからこそ人脈もそれなりものもので、多くの経営者の情報などは嫌でも耳に入ってくると言っていた。
ちなみに島田さんも同じような立場にある人だが、ここではそういう話も振舞いも見せないのが彼らしかった。しかし、今は別だ。
俺にはまだ話の意図が読めない。
「それで、あいつの両親とどういう関係が?」
岡村氏の話題が出てきたということは柚花本人よりも彼女の両親のことなのだろう。近藤さんは眉を曇らせて、やや間を置いてから話し始めた。
「なんでも息子さんに気に入った女性がいるらしくてね。数回しか会ったことがないらしいんだけど。岡村さんも息子が言うなら、是非結婚させたいと思って彼女の両親に話したらしい。当然、両親は本人の気持ちを大事にさせたいからって断ろうとしたんだが……」
「断れる立場ではないわけだ」
言いよどむ近藤さんの言葉を島田さんが続ける。ここまで話されて誰の話をしているのか察せられないほど、頭の回転は鈍くない方だ。
過去形なのは現在は社長の座を息子に譲り、近藤さん自身は顧問という立場を取っている。実質、会社経営はほぼ息子に任せっぱなしらしい。
元々自宅に知り合いを招いて酒を振る舞うのが趣味だったこともあり、社長の座を退いてからは好きが高じて念願のバーをここにオープンさせた。
だからここは営利目的でもなく、限られた人間しか訪れることがない。
ちなみにこのビルも彼の持ち物だ。そういう立場だったからこそ人脈もそれなりものもので、多くの経営者の情報などは嫌でも耳に入ってくると言っていた。
ちなみに島田さんも同じような立場にある人だが、ここではそういう話も振舞いも見せないのが彼らしかった。しかし、今は別だ。
俺にはまだ話の意図が読めない。
「それで、あいつの両親とどういう関係が?」
岡村氏の話題が出てきたということは柚花本人よりも彼女の両親のことなのだろう。近藤さんは眉を曇らせて、やや間を置いてから話し始めた。
「なんでも息子さんに気に入った女性がいるらしくてね。数回しか会ったことがないらしいんだけど。岡村さんも息子が言うなら、是非結婚させたいと思って彼女の両親に話したらしい。当然、両親は本人の気持ちを大事にさせたいからって断ろうとしたんだが……」
「断れる立場ではないわけだ」
言いよどむ近藤さんの言葉を島田さんが続ける。ここまで話されて誰の話をしているのか察せられないほど、頭の回転は鈍くない方だ。