目覚めたら、社長と結婚してました
「どうだろうな。誰と結婚しても同じだったんじゃないか?」
『は? なに言ってんだよ?』
「しょうがないだろ。愛し合って結婚したわけでもないんだ」
自分の中で燻っていた感情を声に乗せる。今の自分たちは夫婦ではあるが、気持ちまではまだ通じ合っていない。長期戦なのはとっくに覚悟の上だ。
それなのに、この頃から柚花の様子がどこかおかしかった。妙に元気がないというか、思いつめた顔を見せることが多くなる。
さらには触れることさえ彼女を強張らせた。無理なことをさせた覚えもない。拒否されるわけでもない。縮めるどころか前よりも距離ができたことに戸惑いが隠せない。
どうしたものか、と悩みながら十二月に入ったある朝、俺は書斎で仕事の資料に目を通し、出勤時間まで本を読んでいた。
そこでなにげなく目の端に「リープリングス」が映る。柚花と親しくなったのもこの本がきっかけだった。
最終巻をここで読んでいた彼女を思い出し、引き寄せられるように俺は本を手に取った。そして変な厚みに気づく。栞にしては分厚く、なによりそれは表紙に挟まれている。
中身を確認して目を見張った。どういうことなのかまったく理解できない。冗談にしてはキツすぎる。
そこには彼女の欄だけが記入されていた離婚届があった。あれこれ考える暇もなく俺はすぐに柚花に詰め寄った。
「柚花。なんだよ、これ」
彼女の驚き具合も相当だった。感情をそのままぶつけてから我に返り、時間が迫っていることに気づく。今はゆっくりと彼女の言い分を聞く時間もない。
『は? なに言ってんだよ?』
「しょうがないだろ。愛し合って結婚したわけでもないんだ」
自分の中で燻っていた感情を声に乗せる。今の自分たちは夫婦ではあるが、気持ちまではまだ通じ合っていない。長期戦なのはとっくに覚悟の上だ。
それなのに、この頃から柚花の様子がどこかおかしかった。妙に元気がないというか、思いつめた顔を見せることが多くなる。
さらには触れることさえ彼女を強張らせた。無理なことをさせた覚えもない。拒否されるわけでもない。縮めるどころか前よりも距離ができたことに戸惑いが隠せない。
どうしたものか、と悩みながら十二月に入ったある朝、俺は書斎で仕事の資料に目を通し、出勤時間まで本を読んでいた。
そこでなにげなく目の端に「リープリングス」が映る。柚花と親しくなったのもこの本がきっかけだった。
最終巻をここで読んでいた彼女を思い出し、引き寄せられるように俺は本を手に取った。そして変な厚みに気づく。栞にしては分厚く、なによりそれは表紙に挟まれている。
中身を確認して目を見張った。どういうことなのかまったく理解できない。冗談にしてはキツすぎる。
そこには彼女の欄だけが記入されていた離婚届があった。あれこれ考える暇もなく俺はすぐに柚花に詰め寄った。
「柚花。なんだよ、これ」
彼女の驚き具合も相当だった。感情をそのままぶつけてから我に返り、時間が迫っていることに気づく。今はゆっくりと彼女の言い分を聞く時間もない。