目覚めたら、社長と結婚してました
「にしても、初めてでここを選ぶってなかなか通だね」
男性客が笑いながら声をかけてくる。
「それは」
そこで私の視界には店内にいたもうひとりの男性が映った。ここに入ったときは、緊張のあまり意識を向けていなかったが、私の堰から斜め向かい、カウンターの一番左奥に座っている彼の姿に目を奪われる。
こちらに視線を一切寄越すこともなく手元にある本に意識を集中させている。あそこの奥だけライトが別にあって、彼の顔をくっきりと照らしていた。
「社長」
思わず呟いた言葉に、彼が顔を上げた。視線が交わり、半信半疑が確信に変わる。
「なんだ、怜二の知り合いか?」
「社長ってことは天宮ソリューションズの社員さん?」
マスターと男性客に畳みかけるように質問される。こんなところで社長に遭遇するなんて信じられない。でも人違いで済ますには、彼は他の追随を許さない外見の持ち主だ。
上等なスーツを身に纏い、迫力のある眼差しで、社長は不機嫌そうに私をじっと見てきた。そしてその口が動く。
「誰に聞いた?」
「はい?」
彼の声は想像していたより低く、それでいてよく通る。しかし、今はいきなりの質問に意味が理解できない。
そもそも社長に直接話しかけられること自体、初めてで状況に頭がついていかない。混乱する私を無視して社長は厳しい声で続けた。
「俺がここを出入りしていること、誰に聞いたんだ?」
「だ、誰にも聞いていませんよ」
意図が読めずに私は正直に答える。
男性客が笑いながら声をかけてくる。
「それは」
そこで私の視界には店内にいたもうひとりの男性が映った。ここに入ったときは、緊張のあまり意識を向けていなかったが、私の堰から斜め向かい、カウンターの一番左奥に座っている彼の姿に目を奪われる。
こちらに視線を一切寄越すこともなく手元にある本に意識を集中させている。あそこの奥だけライトが別にあって、彼の顔をくっきりと照らしていた。
「社長」
思わず呟いた言葉に、彼が顔を上げた。視線が交わり、半信半疑が確信に変わる。
「なんだ、怜二の知り合いか?」
「社長ってことは天宮ソリューションズの社員さん?」
マスターと男性客に畳みかけるように質問される。こんなところで社長に遭遇するなんて信じられない。でも人違いで済ますには、彼は他の追随を許さない外見の持ち主だ。
上等なスーツを身に纏い、迫力のある眼差しで、社長は不機嫌そうに私をじっと見てきた。そしてその口が動く。
「誰に聞いた?」
「はい?」
彼の声は想像していたより低く、それでいてよく通る。しかし、今はいきなりの質問に意味が理解できない。
そもそも社長に直接話しかけられること自体、初めてで状況に頭がついていかない。混乱する私を無視して社長は厳しい声で続けた。
「俺がここを出入りしていること、誰に聞いたんだ?」
「だ、誰にも聞いていませんよ」
意図が読めずに私は正直に答える。